デジタル距離術

SNSのポジティブな側面でも疲れる?:心穏やかに付き合うデジタル距離術

Tags: SNS疲れ, デジタル距離術, 心の健康, ポジティブ疲れ, 自分軸

SNSは、友人や知人の良い出来事を共有したり、感動的な話に触れたり、趣味の仲間とポジティブな交流をしたりと、私たちの心に温かい気持ちをもたらしてくれる場でもあります。共感し、励まし合い、成功を祝い合うような、ポジティブな側面があることは確かです。

しかし、こうした一見「良い情報」や「良い交流」に触れているだけでも、なぜか疲れてしまう、という経験はありませんでしょうか。他者比較や情報過多といったネガティブな側面だけでなく、ポジティブな側面からも疲れが生じることがあります。

この記事では、SNSのポジティブな側面から生まれる「疲れ」の原因を探り、心穏やかにSNSと付き合うための具体的なデジタル距離術をご紹介します。

なぜSNSのポジティブな側面でも疲れるのか?

SNS上のポジティブな情報や交流が、時に疲労感につながるのにはいくつかの理由が考えられます。

ポジティブな情報への「反応義務感」

友人や同僚の嬉しいニュースや成功の投稿を見たとき、「いいね」やコメントで祝福すべきだ、という義務感を感じることはありませんでしょうか。これは、関係性を良好に保ちたい、あるいは自分も温かい人だと思われたい、といった心理から生まれるものです。全てのポジティブな投稿に丁寧に反応しようとすると、その積み重ねが大きな負担となることがあります。

他者の幸せや成功を見ることによる無意識の比較

「キラキラした投稿」や成功話を見ることによる他者比較疲れはよく知られていますが、これはポジティブな情報でも起こり得ます。例えば、友人の結婚報告や昇進のニュース、新しい趣味で充実している様子などを見たときに、「それに比べて自分は…」と無意識のうちに比較してしまい、落ち込んだり焦りを感じたりすることがあります。これは、純粋な祝福の気持ちと同時に起こり得る複雑な感情です。

共感や応援に伴う心理的負担

SNSを通じて、誰かが大変な状況を乗り越えた話や、目標に向かって努力している姿を知り、共感したり応援したりすることは素晴らしいことです。しかし、相手の感情に深く寄り添いすぎたり、「力になりたい」という気持ちが強すぎるあまり、自分自身の心が疲弊してしまうことがあります。ポジティブなストーリーであっても、そこに投じられるエネルギーは少なくありません。

過度な自己開示やポジティブ発信のプレッシャー

自分自身がSNSで何かを発信する際、「良い情報」「ポジティブな自分」を見せなければ、というプレッシャーを感じることがあります。日々の生活で全てがポジティブであるわけではないにも関わらず、SNS上では明るい側面だけを切り取って見せようと努力することが、隠れた疲労感につながることがあります。

ポジティブな情報も情報過多の一部

たとえ内容がポジティブであっても、流れてくる情報量が膨大であれば、脳はそれを処理するためにエネルギーを消費します。次々と新しい情報に触れ続けること自体が、精神的な疲れの原因となることがあります。

心穏やかに付き合うためのデジタル距離術

SNSのポジティブな側面から生まれる疲れを軽減し、心穏やかに付き合うためには、いくつかの具体的な距離術を試してみる価値があります。

1. 反応のハードルを下げる意識を持つ

全ての投稿に丁寧に反応する必要はありません。「いいね」一つで十分な場合もあれば、スタンプ一つでも気持ちは伝わります。あるいは、心から祝福したい、応援したいと感じた投稿にだけ、時間をかけてメッセージを送るようにするなど、自分にとって負担にならない範囲で反応することを選択してください。SNSは、現実の人間関係における全ての礼儀作法を要求する場ではない、と捉え直してみると良いでしょう。

2. 感情の境界線を意識する

他者のポジティブな出来事や、困難を乗り越えたストーリーに触れた際、共感することは大切ですが、その感情に自分自身が深く引きずられすぎないように意識することが重要です。相手は相手、自分は自分、という健康的な境界線を心の中に持つようにしましょう。感動や祝福の気持ちは受け止めつつも、その後の自分自身の感情や状態に過度に影響を与えないよう、一呼吸置く習慣をつけることが有効です。

3. ポジティブな情報も客観的に見る視点を持つ

SNS上のポジティブな情報は、多くの場合、発信者の良い側面や成功談が強調されています。それは決して悪いことではありませんが、それがその人の「全て」ではないということを理解しておくことが、無意識の比較や劣等感を防ぐ助けとなります。また、自分にとって本当に価値のある情報か、単に流れてきた情報として受け流すかで、情報の処理にかかるエネルギーは変わります。ポジティブな情報も、自分にとって必要かという視点で選別してみましょう。

4. 自分軸での発信・閲覧を心がける

SNSでの自己開示や発信について、無理にポジティブに見せようとする必要はありません。自分の心に正直に、心地よいと感じる範囲で表現することが、結果的に継続可能で負担の少ない付き合い方につながります。また、閲覧についても、他者の動向を追いかけるのではなく、自分が純粋に興味のある情報や、見ていて心が安らぐアカウントを中心にチェックするなど、自分軸でタイムラインを編集し直すことを試してみてはいかがでしょうか。ミュート機能なども活用できます。

5. 意図的なデジタル休憩を設ける

ポジティブな情報であっても、継続的に浴び続けることは精神的な疲労につながります。意識的にSNSから離れる時間、例えば、特定の時間帯は通知をオフにする、就寝前には一切見ない、週末の数時間はスマホから離れるなど、デジタル休憩やプチデジタルデトックスを取り入れることが有効です。

まとめ

SNSはポジティブな交流や情報に満ちている側面も持ち合わせていますが、それらが意外な形で心の負担となることがあります。反応への義務感、無意識の比較、共感に伴う心理的負担、ポジティブ発信のプレッシャー、そして情報量の多さが、その主な原因として考えられます。

これらの疲れと上手に付き合うためには、全ての投稿に丁寧な反応をしない、他者の感情と自分の感情に境界線を引く、ポジティブな情報も客観的に捉える、自分軸での発信や閲覧を心がける、そして意図的なデジタル休憩を設けるといったデジタル距離術が役立ちます。

SNSのポジティブな側面は、私たちの生活を豊かにしてくれる可能性を秘めています。しかし、その恩恵を受け取るためには、自分自身の心の状態に注意を払い、無理のない、心地よい距離感を見つけることが何よりも重要です。今回ご紹介した視点や方法が、心穏やかにSNSと付き合っていくための一助となれば幸いです。