SNSの『共感』から生まれる違和感:自分軸を取り戻す心の距離術
SNSの『共感』から生まれる違和感:自分軸を取り戻す心の距離術
SNSを見ていると、「みんな楽しそう」「みんな同じ意見を持っている」「みんな特定のことに熱中している」と感じることがあります。そのような状況で、自分だけがそうではないように感じたり、特定の投稿にどうにも共感できなかったりして、心に違和感や疲れを覚えることはありませんか。
SNSは時に、多数派の意見や感情が強調されやすく、そこに自分がフィットしないと感じると、まるで自分がおかしいのではないか、置いていかれているのではないかと不安になることがあります。これは「共感できない疲弊」とも呼べる現象であり、心穏やかにSNSと付き合う上で見過ごされがちな課題です。
この記事では、なぜSNSで「共感できない疲弊」が生まれるのか、そしてそのような疲弊から心を守り、自分軸を保ちながらSNSと上手に付き合うための具体的な「心の距離術」についてご紹介します。
なぜSNSで「共感できない疲弊」が生まれるのか
SNSで特定の投稿や多数派の意見に共感できないことで疲弊するのは、SNSの特性と人間の心理が影響し合っているためと考えられます。
- SNSは「ポジティブな側面」が強調されやすい場であること: 人はSNSで、比較的良い出来事や成功体験、共感を得やすい意見などを発信しがちです。そのため、タイムラインは実際の日常よりもポジティブな情報が多くなり、「みんな輝いている」という印象を与えやすくなります。
- 多数派意見や特定の価値観が集まりやすい構造: アルゴリズムやコミュニティの特性により、似たような考え方や興味を持つ人々が集まりやすくなります。これにより、特定の意見や価値観が「普通」「当たり前」であるかのように見えやすくなります。
- 人間の心理における同調圧力や承認欲求: 私たちは社会的な生き物であり、他者からの承認を求めたり、集団に属している安心感を得たいと感じたりします。SNSにおいても、知らず知らずのうちに「みんなと同じように感じなければ」「共感を示さなければ」という意識が働き、同調できない自分に違和感を覚えやすくなります。
- 「自分だけ違う」と感じる孤独感: 多くの人が共感している中で、自分だけがそこに加われない、あるいは加わる気になれないと感じると、「自分は孤立しているのではないか」「何か欠けているのではないか」といった孤独感や不安に繋がり、心が疲れてしまいます。
このような要因が重なることで、SNSにおける「共感」が、心地よい繋がりではなく、時にプレッシャーや疲弊の原因となるのです。
自分軸を取り戻すための具体的な「心の距離術」
SNSでの「共感できない疲弊」から心を守り、自分軸を大切にしながらSNSと付き合うためには、いくつかの具体的な方法があります。
1. 違和感を客観的に言語化する
まず、何に、なぜ自分が違和感や共感できなさを感じているのかを具体的に考えてみましょう。特定のトピックでしょうか、特定の表現でしょうか、それともその場の雰囲気でしょうか。「なぜ自分はそう感じるのだろう?」と、自分の内側の感情や思考に静かに耳を傾けてみてください。その感情を否定せず、「今はこう感じているんだな」と受け止めることから始めます。言語化することで、漠然とした不安が整理され、対処法が見えやすくなることがあります。
2. SNSは「全て」ではないと認識する
SNSに投稿されている情報は、発信者の生活や思考のほんの一部を切り取ったものです。また、見ているのは特定のフィルターを通った情報であり、世の中の全ての人や全ての意見がそこに集約されているわけではありません。画面の中の世界が現実の全てではないことを意識的に思い出すことで、「みんながこうだから自分もこうあるべき」という考えから一歩距離を置くことができます。
3. 自分自身の価値観を再確認する
SNSの外部基準に惑わされそうになったら、自分自身が何を大切にしているのか、何に興味があるのか、どんな状態が心地よいのかといった、自分自身の価値観を再確認する時間を持つことが有効です。SNSで流れてくる情報や他者の価値観と、自分自身の内側にある価値観を冷静に見比べ、「自分にとって本当に必要なもの、大切なものは何か」を思い出すことが、自分軸を取り戻す助けとなります。
4. 「共感しなくてはならない」という思い込みを手放す
全ての投稿に共感する必要は一切ありません。多様な考え方や感じ方があって当然です。SNSは多様な情報や意見が飛び交う場であり、その全てに自分が同意したり、感情移入したりすることは物理的にも心理的にも不可能です。「共感できなくても大丈夫」「自分は自分」と割り切る勇気を持つことで、心が軽くなります。
5. 物理的・心理的な距離をとる
特定の情報源からの投稿が継続的に違和感や疲弊の原因となっている場合は、ミュート機能を活用するなどして、物理的にタイムラインから距離をとることも有効な手段です。また、SNSを見る前に「これは自分にとって本当に必要な情報か?」と問いかけたり、意図的にSNSから離れる時間(デジタルデトックス)を設けたりするなど、心理的な距離を意識的に作ることも大切です。
6. リアルな人間関係や、SNS外の活動を大切にする
SNSの世界だけでなく、現実世界での友人や家族との対話、趣味や仕事など、SNS以外の活動にも目を向け、大切にすることも心の健康を保つ上で重要です。現実世界での繋がりや、SNSの反応に左右されない自分自身の活動から得られる充足感は、自己肯定感を育み、SNSにおける外部基準からの影響を受けにくくする助けとなります。
まとめ
SNSで特定の投稿や多数派の意見に共感できないことで疲弊することは、多くの人が経験しうる自然な感情です。それは決して、あなたが「おかしい」わけでも、劣っているわけでもありません。むしろ、自分自身の感性や価値観を大切にしている証拠とも言えます。
今回ご紹介した「心の距離術」は、SNSにおける『共感』という側面と上手に付き合い、自分にとって心地よい距離感を見つけるためのヒントです。違和感を言語化し、SNSの特性を理解し、自分自身の価値観を大切にすることで、「共感しなくては」という無意識のプレッシャーから解放され、自分軸でSNSと付き合うことができるようになるでしょう。
SNSは便利なツールですが、あなたの心の健康よりも優先されるべきものではありません。自分自身の心に優しく、心地よさを優先しながら、SNSとの向き合い方を見つけていくことをお勧めします。