デジタル距離術

SNSの議論疲れと上手に付き合う：自分軸を保つ心の距離術

SNSを利用していると、様々な意見や情報が飛び交い、時に激しい議論や対立を目にすることがあります。こうした状況に触れることで、知らず知らずのうちに心が疲れてしまう、「議論疲れ」を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「なぜここまで言い合うのだろう」「自分の意見を言うのが怖い」「見ているだけでモヤモヤする」といった感情は、SNSの議論疲れのサインかもしれません。本記事では、SNSの議論疲れの原因を探り、心穏やかに自分軸を保つための具体的な心の距離術について考えていきます。

なぜSNSの議論は私たちを疲れさせるのか

SNS上での議論が心に負担をかけるのには、いくつかの理由が考えられます。

まず、文字情報だけでは相手の表情や声のトーンが分からず、感情が伝わりにくいため、意図せず攻撃的になったり、誤解が生じたりしやすいという点があります。また、匿名性や限られた文字数の制限が、感情的な投稿や断定的な表現を助長することもあります。

さらに、私たちは自分と異なる意見に触れた際に、自身の価値観や考え方を否定されたように感じてしまうことがあります。特に、タイムラインに次々と流れてくる多様な意見や、強い言葉で語られる「正しさ」の主張に触れることは、自分の軸が揺らぐような感覚や、居心地の悪さにつながることがあります。

こうした環境の中で、建設的な対話というよりも、互いの意見をぶつけ合う消耗戦のように感じられる議論が多く見られます。それに巻き込まれたり、あるいは傍観しているだけでも、精神的なエネルギーが消耗されてしまうのです。

議論疲れから心を守るための心の距離術

SNSの議論による疲弊を軽減し、自分軸を保つためには、意識的に心の距離を置くことが有効です。ここでは、いくつかの具体的な方法をご紹介します。

1. 議論や対立の兆候が見られる投稿から距離を置く

タイムラインで議論が始まりそうな投稿や、既に激しい意見交換が行われているスレッドを見かけた際に、深入りしないという選択をすることが大切です。すぐにスクロールして情報を遮断するなど、物理的に視界に入れない工夫をしましょう。ミュート機能やブロック機能を活用することも有効な手段です。特定のトピックやキーワードをミュートできる機能があれば、活用を検討しても良いでしょう。

2. 自分の心の状態を優先する

SNSを見る前に、今自分の心がどのような状態にあるかを確認する習慣をつけることをおすすめします。疲れている時、気分が落ち込んでいる時、あるいは特定のことに感情的になっている時は、議論や対立する意見に触れることで、より心が消耗しやすい状態にあります。そのような時は、無理にSNSを見ない、あるいは見るとしても情報収集に留めるなど、利用を制限することが心の健康を守ることにつながります。

3. 異なる意見を「間違い」ではなく「異なる視点」と捉える練習をする

SNSで見かける意見は、その人の経験や価値観に基づいて形成されたものです。自分とは全く違う意見であっても、「そういう考え方もあるのだな」と、一旦感情を挟まずに受け流す練習をしてみましょう。全ての意見に同意する必要はありませんし、反論したり説得したりする必要もありません。「異なる視点が存在する」という事実を認識するだけに留めることで、心が波立ちにくくなります。

4. 自分の意見表明のハードルを下げる

SNSで自分の意見を表明することに疲れや恐れを感じている場合、無理に発信しないという選択肢もあります。全ての出来事や話題に対して意見を持つ必要はありませんし、それを表明する義務もありません。もし発信するとしても、特定の誰かを納得させるためではなく、あくまで「自分はこう考える」という記録や共有の目的で、軽い気持ちで行うことが、心の負担を軽減するでしょう。過度な反応を期待しないことも大切です。

5. 情報源を多様化する

SNSの情報は断片的で、感情的に偏っていることがあります。特定のテーマについて深く知りたい場合は、SNSだけでなく、信頼できるニュースサイト、専門家の書籍、論文など、複数の情報源を参照することをおすすめします。多角的な視点を持つことで、SNS上の議論が持つ極端さや単純化された情報に振り回されにくくなります。

心穏やかにSNSを利用するための習慣

議論疲れを防ぐためには、日頃からのSNSとの付き合い方も見直してみましょう。

• SNSを見る時間やタイミングを決める: ダラダラとタイムラインを眺めるのを避け、SNSを見る時間や目的を意識することで、不要な情報や議論に触れる機会を減らすことができます。
• 議論になりやすいトピックから距離を置く: 炎上しやすい、あるいは自分が感情的になりやすい特定のトピックに関するアカウントや情報は、意識的に距離を置くことも有効です。
• SNSに完璧な情報や人間関係を求めない: SNSはあくまでコミュニケーションや情報共有のツールの一つです。SNS上での意見の不一致や人間関係のトラブルは起こり得るものだと理解し、必要以上に思い詰めないことが大切です。
• 定期的に「デジタル片付け」を行う: フォローしているアカウントや参加しているグループを見直し、自分にとって心地よい情報源や関係性だけを残すように整理することで、自然と心穏やかなタイムラインになっていくでしょう。

まとめ

SNSの議論疲れは、多くの人が感じやすい疲弊の一つです。情報の性質やプラットフォームの構造上、意見対立は避けられない場面もありますが、それに心を囚われすぎないための「心の距離術」を身につけることは可能です。

議論や対立の兆候から意図的に距離を置くこと、自分の心の状態を常に気にかけること、異なる意見への向き合い方を変えること、そして自分にとって心地よいSNS利用の習慣を確立すること。これらを意識することで、SNSの議論に消耗することなく、自分軸を保ちながら心穏やかにデジタル空間と付き合っていくことができるでしょう。

SNSは、多様な情報や人々と繋がれる素晴らしいツールでもあります。疲れを感じた時は、自分にとって何が大切か、何のためにSNSを使いたいのかを再確認し、SNSとの健全な距離を見つけるためのステップとしてみてはいかがでしょうか。