『見る専』でも疲れるSNS:原因と心穏やかに過ごす距離術
SNSを積極的に投稿せず、タイムラインを「見るだけ」という利用スタイルの方は少なくないでしょう。友人や知人の近況を知ったり、興味のある情報を収集したりと、便利に活用されている方もいるかもしれません。しかし、いわゆる「見る専」の方の中にも、SNSを見た後に何となく疲労感を感じたり、心がざわついたりすることがあるのではないでしょうか。
なぜ、見るだけなのに疲れてしまうのでしょうか。この記事では、「見る専」の方がSNSで疲労を感じる主な原因を掘り下げ、心穏やかにSNSと付き合うための具体的な「距離術」をご紹介します。
なぜ「見る専」でもSNS疲れを感じるのか
投稿しない「見る専」だから疲れない、ということはありません。むしろ、受動的に情報に触れ続けるからこその疲労感があります。主な原因として、以下のような点が考えられます。
1. 情報過多と脳の疲労
タイムラインをスクロールするだけで、膨大な量の情報が次々と視覚に入ってきます。これはテキスト情報だけでなく、画像や動画、音声など多岐にわたります。脳はこれらの情報を無意識のうちに処理しようと働くため、短時間でも集中して情報を受け取り続けると、脳が疲弊してしまいます。特に興味のない情報やネガティブな情報も混在しているため、情報の取捨選択が行われづらく、脳への負担が大きくなることがあります。
2. 無意識の他者比較
意図的に比較しようとしていなくても、流れてくる他者の「良い面」や「成功体験」を見続けることで、無意識のうちに自分自身の現状と比較してしまうことがあります。特に「見る専」の場合、自分の日常を発信する機会が少ないため、他者の輝かしい部分だけが目に留まりやすく、自分は「何もできていないのではないか」といった劣等感や焦りにつながることがあります。
3. スクロール行動そのものによる疲労
何時間も連続してタイムラインをスクロールする行為は、物理的にも精神的にも疲労を伴います。指の動き、画面のちらつき、そして「次は何があるだろう」という期待と不安のサイクルは、ドーパミンの放出を促し、一種の依存状態を生み出しやすくします。これにより、やめ時が見つけにくくなり、長時間利用につながって疲労が増幅されることがあります。
4. 受動的な情報摂取による消化不良
積極的に情報を探しに行くのではなく、流れてくる情報をただ受け取るだけの状態では、情報が断片的になりがちです。得た情報が自分にとって本当に必要か、どのように活用できるかなどを考える機会が少ないため、情報が脳内で整理されず、消化不良を起こしやすくなります。これも、後で「何だか疲れたな」と感じる原因の一つとなり得ます。
心穏やかに「見る専」を楽しむためのデジタル距離術
「見る専」というスタイルを楽しみつつ、心の健康を保つためには、いくつかの具体的な距離術を実践することが有効です。
1. タイムラインの「ノイズ」を減らす
流れてくる情報すべてに目を通す必要はありません。 * フォロー/ミュート機能の活用: 興味が薄れたアカウントや、見ていて気分が沈むような投稿が多いアカウントは、フォロー解除やミュート機能を活用することを検討しましょう。これにより、自分のタイムラインをより快適な空間にカスタマイズできます。 * リスト機能の活用: 特定のテーマや親しい友人など、見たい情報をグループ分けできる機能があれば積極的に利用しましょう。これにより、見たい情報に絞って効率的にアクセスできます。 * 情報の取捨選択を意識する: スクロールする際も、「これは自分にとって必要な情報か」「見ていて楽しいか」といった視点を持ちながら情報に触れる習慣をつけることで、無駄な情報処理を減らせます。
2. 見る時間を区切る・制限する
際限なく見てしまうことを防ぐために、SNSを見る時間を意識的に制限しましょう。 * 時間を決める: 「朝の準備中に10分」「休憩時間に15分」のように、具体的に時間を決めて利用します。スマートフォンのタイマー機能を活用するのも良い方法です。 * アプリの利用時間制限機能を使う: スマートフォンに搭載されているアプリごとの利用時間制限機能を設定することで、使いすぎを防ぐことができます。 * SNSを見る前に目的を考える: 「〇〇さんの最近の様子を見よう」「△△に関する情報を集めよう」など、具体的な目的を持ってSNSを開くことで、「何となく見る」状態を減らすことができます。
3. 他の情報源とのバランスを取る
SNSだけでなく、他の媒体からも情報を得るように意識しましょう。 * ニュースサイト、専門性の高いウェブサイト、書籍、雑誌など、SNS以外の情報源からもバランス良く情報を得ることで、情報が断片的になることを防ぎ、より深く理解を深めることができます。 * SNSで得た情報について、他の信頼できる情報源で裏付けを取る習慣をつけることも、情報の消化不良を防ぎ、確かな知識として定着させる助けとなります。
4. 自分自身の価値観を定期的に見直す
SNSで他者の投稿に触れる中で、自分自身の価値観や目標が揺らぐことがあるかもしれません。 * 「自分にとって大切なこと」を意識する: SNSを見る前後で、「自分は何を大切にしているか」「これからどうなりたいか」といった自分軸を意識的に確認する時間を持つと良いでしょう。 * SNSは「情報の断片」であることを理解する: SNSの投稿は、その人の日常のほんの一部分であり、多くの場合ポジティブな側面が強調されていることを忘れないようにしましょう。それがその人の全てではないと理解することで、不要な比較から距離を置くことができます。
まとめ
「見る専」というスタイルは、手軽に情報に触れることができる一方で、情報過多や無意識の比較、スクロール疲れなど、特有の疲労を生む可能性があります。しかし、これはあなたが悪いわけではなく、SNSというプラットフォームの性質による部分も大きいのです。
今回ご紹介した「タイムラインのノイズを減らす」「見る時間を区切る」「他の情報源とのバランスを取る」「自分自身の価値観を見直す」といったデジタル距離術は、どれも実践しやすい方法です。全てを一度に試す必要はありません。ご自身にとって取り入れやすそうなものから、一つずつ試してみてはいかがでしょうか。
SNSは上手に付き合えば、私たちの生活を豊かにしてくれるツールです。見る専というスタイルだからこそ可能な、心地よい距離感を見つけ、心穏やかにデジタルライフを楽しむための一歩を踏み出してみましょう。